理想と現実
大きく開かれた立派な玄関ドアを入るとそこには整然と並べられたスリッパが用意されている。ふかふかのスリッパを履いたちょうどそのころ、絶妙なタイミングで営業マンが満面の笑みを浮かべながら出迎えてくれる。空調が程好く聞いた室内には心地よいBGMが。各部屋をスムーズに案内され、気がつけば最寄の商談テーブルにはお茶が入れられている。まぁどうぞ、と座らされる。あたりの良い爽やかな口調に聞き入っているうちあっという間に2時間が経過。何となく特別な気分で帰路につく。
家に帰る。
勝手口かと見間違うほどのアパートの玄関を開けると子供の靴やらカミさんの靴がところせましと並ぶ。たしかカミさんの足は2本しかなかった筈だが・・・などといらぬ事を考えながらネクタイをはずし、シャツを脱ぎ、靴下を脱ぎ・・・。
ふと見上げるとそこにはカミさんが鬼のような形相で立っている。いったい何時だと思ってるの?洗濯物脱ぎっ放しじゃない・・・。
おそるおそる聞く、飯は?
えっ?食べるの?
仕方なく、カップラーメンをすすり、寝る。
理想と現実のギャップはそう簡単に埋まりそうもない。
扇建築工房の見学会では『現実』を体感してもらいたい。