「ゆたかさ」のある暮らし
最近、土地を買われるクライアントから、「田んぼ」の隣に住みたいって言われることが多くなりました。
その火付け役となったのが、袋井の家。
北と西に広がる田んぼの景色や恩恵を最大限取り込んで設計いたしました。
ゴールデンウィークを過ぎると田んぼには水が張られ、窓を開ければそれはそれは涼しい風が通り抜けます。
雨がかからないように広く設計した軒下デッキは、最高のアウトドアリビングであり、ダイニングです。
家族だけでなく、ここに集う友達の多くはこのデッキを大いに楽しんでいらっしゃるそうです。
私が訪れた3日ほど前は、デッキに吊るされたハンモックを揺らしながら子守をする奥様と、毎日のように涼みにいらっしゃるお父さんが、ちょうどまったりしてるとこでした。(笑)
そして、皆さんは日の暮れるのを心待ちにしています。
なぜなら、このデッキから眺めるサンセットは見るものすべてを感動させてくれるのです。
住むことだけが目的の「家」であれば、このようなデッキや軒下は必要ないでしょう。お金もかかりますしね。
でも、少しだけ設計に工夫を凝らすこと(お金も少々かかりますが 汗)で、生活に「ゆたかさ」をプラスできます。
せっかく創る家ですから、生涯を楽しく暮らしたいですもんね。
ただ、「田んぼの隣」プチブーム到来?には良いことばかりでなく、必ず心得ておかなければならない大切な「覚悟」みたいなものがあります。
そもそも、こうした田んぼのある風景の多くは「市街化調整区域」といわれるところにあります。
市街化調整区域とは、市街化を抑制する目的の区域でして、例外的に建物の建築が認められることはありますが、一般の人が住宅を建築することは原則として認められていません。
本来は農業や農業従事者を守っていくための地域ですから、家を建てると農家さんにとって不具合もでてきます。
田んぼや茶畑には農薬を撒かなくてはならないのに、住宅に洗濯物が出てれば気を使います。
2階建てはもちろん、平屋で建てたって、北側は日陰になってしまい、作物は育ちません。
ましてや農業用水に生活雑排水なんか流されたらたまったもんじゃありません。
ところが、この「調整区域」を理解せずに、例外を使って家を建てる方の中には、「法的なお墨付きをもらって建ててるのだから、何が悪いのよ?」といったスタンスの方がいらっしゃるのも事実で、このようなお考えでは農家さんとうまく共存できっこありません。
やはり、調整区域に住まれる方は「農家さん、こんなとこに家を建てさせてもらって申し訳ないですね」の姿勢が大切です。
田んぼの隣の生活も、こうした覚悟を持ちさえすれば、素晴らしいものになることは間違いありません。