客間の必要性を考える
できれば(←ここがポイント)、客間を欲しいのだが・・。
地域性もあるのでしょうが、ほとんどの方が口にする要望です。
勿論、大きな敷地に潤沢な資金、といった夢のような環境にあれば、迷うことなく備えたいところではありますが・・。
では、客間を何に使うのかと尋ねれば、ほとんどの方(特にご主人)は、将来、親と同居するかもしれないので、と言われます。
新築時から親と同居することが決まってる、とか、お教室みたいなことしてて不特定多数の訪問者が多い、とか、夜勤があって、生活リズムが違う、とか、資金援助してくれた親からのたっての希望で、とかであればともかく、「するかもしれない同居」に備えるためだけの客間であれば、今一度、深呼吸をしてから考え直したいところです。
実は私もいくつかの「同居に備えた客間」を設計したことがあります。
皆様のまわりにも、この「同居に備えた客間」を設けた家に住まれている方がいることでしょう。
では、「同居に備えた客間」に実際、親御さんが同居されたって方をご存じですか。
私は知っている限り、こうした事実を知りません。
ではなぜか。
親が健康な時期にする同居と、親の介護を伴う時期にする同居の両面から考えてみます。
まず、前者。
健康で、活力ある生活を謳歌されている親御さんの同居を考えてみます。
ご両親と同居するというよりも、どちらかに先立たれたお父さんと、もしくはお母さんとだけ同居することが想像されます。
子供も独立し、伴侶に先立たれて一人暮らしをしている親御さんは、きっとすべてにおいて、自由気ままな生活をされていることでしょう。
好きな時に好きなものをつまみ、起きたいときに起きて、寝たい時に寝る。
空き部屋はたくさんありますから、趣味のものをたくさん買い込み、物に溢れた暮らしをしています。
同じく伴侶に先立たれた友達が、まるで我が家のように出入りし、夜更かししてきます。
たまに訪ねてくる孫とのふれあいは最高の楽しみであります。
さて、こんな暮らしをしている(であろう)親御さんの生活が、皆さんのイメージする客間に納まりきるでしょうか。
6帖一間と2帖の押入れに、です。
随分と不自由を強いられることが予想されますね。
では、後者。
介護が必要となった方にとって、環境の変化というのは大敵です。
本来であれば一番安心していられるはずの病院でさえも抜け出し、我が家に帰りたいと願うのは、自由が利かなくなればなるほど住み慣れた環境を望むからです。
どこに何があって、どこの窓からどんな景色が見えるのか。
誰が近くに住んでて、どんなわがままを聞いてもらえるか。
親御さんに介護が必要になったとき、お子さんの家に同居する、というのは非常に精神的、肉体的負担が大きいものでして、できることであれば、介護する方が、親御さんの住み慣れた実家などに出向いて、もしくは一時的に同居して、介護するほうが親御さんの負担が少ないんじゃないかと思うわけであります。
どうでしょう。
あったに越したことはない「客間」。
本当に必要か考えてみていただくきっかけとなれば幸いです。