基本の「キ」
基礎は建物の中で最も大切な部分
「基礎」は数十年という長い期間、大切な家を支え続ける重要な部分です。
今回は、家づくりに役立つ「基礎の役割」について解説致しますので、知識を持っておきましょう。
1. 基礎が担う大切な役割とは
家づくりの工事が始まると、最初に出来上がるのが「基礎」です。
コンクリートで作られた基礎を見た瞬間、これから仕上がっていく我が家に感動と期待感を覚える人が多いようです。
ところが、基礎は工事が進むにつれて外周を除くほとんどの部分が見えなくなってしまいます。
この先数十年という長期間に渡り、大切な家を支え続ける役割を担っていますが、家が完成してしまうとほとんど人の目に触れる機会がありません。
基礎の役割は、建物の荷重や地震・風等の外力を地盤に伝えることです。
また、地表の湿気や降雨時の水からも建物を守る役割を持っています。
一般的な「基礎」は、一見すると頑丈でいつまでも朽ち果てることがないようなイメージを持ちます。
ところが基礎にも寿命があります。
建物を支える基礎がしっかりしているほど家は長持ちし、安心して暮らすことができます。
「基礎」はあとから作り直すのが難しい部位だけに、最初からしっかりとした計画と施工が肝心です。
2. 耐震の要となる基礎の基本構造
基礎には「建物を支える」「湿気を防ぐ」以外に「地震に耐える」という重要な役割があります。
耐震性を高めるためには、基礎と建物本体が離れ離れにならないように一体化させなければいけません。
一体化のためには柱や筋違(すじかい)・耐力壁をバランス良く配置し、引き抜かれないために専用金物で緊結することが重要です。
しかし、それ以前に耐震性の役割を十分果たすためには、基礎自体が堅牢でなければいけません。
基礎を構成する主な材料は「コンクリート」と「鉄筋」です。
コンクリートの歴史は非常に古く、古代ローマ時代より使われています。
圧縮力(押す力)に強い半面、引張力(引く力)やせん断力(はさみで切るような力)に弱いという特性を持っています。
一方、鉄筋は圧縮力・引張力・せん断力に強いのですが、サビや火に弱いという特徴があります。
このお互いの弱点を補った構造が鉄筋コンクリート造です。
鉄とコンクリートは温度の影響で収縮しますが、伸びる割合(線膨張係数)が100℃前後までほぼ同じです。
もしも鉄とコンクリートの伸びる割合が異なれば、気温の変化であっという間に割れてしまいます。
素晴らしい特性を持つ鉄筋コンクリートですが、実は弱点がないわけではありません。
コンクリートは本来アルカリ性ですが、長い年月を経て徐々に中性化していきます。コンクリートが中性化すると鉄筋が錆び、膨張してコンクリートを割ってしまいます。
鉄筋の20%が酸化すると基礎は寿命を迎えるといわれますが、最初からしっかりとした基礎を作り、メンテナンスを行うことによって長期間耐えられる堅牢な基礎をつくることができます。
3. 昔の基礎と今の基礎の大きな違い
「基礎」にはいくつかの種類があります。
ひと昔前の住宅では「布基礎」が主流でしたが、最近は耐震性や地盤沈下防止の観点から「ベタ基礎」が一般化しています。
「ベタ基礎」は使用する材料が増えるために割高に感じますが、不同沈下の防止や耐震性の向上、シロアリ防止にもつながり、長期間で見ると逆に安価になります。
代表的な基礎の種類を紹介しましょう。
【礎石基礎】
束石という大きな石を地面に埋め、その上に柱を立てます。 基礎となる石の上に直接柱を立てるこの工法を「石場建て」と呼びます。 石場建てでは、石の上に柱を乗せているだけなので地面と建物は繋がっておらず、 地震の際は、礎石の上を柱が跳ねたり滑ったりすることで、建物に伝わる揺れのエネルギーを受け流す仕組みです。 近年は、一般的な住宅で礎石基礎の住宅が建てられることは、ほとんどなくなりました。 |
【布基礎】
鉄筋コンクリート製の逆T型の断面を持つ基礎です。 建物の外周部分と内部の必要な部分だけ工事を行う方法です。 コンクリートと鉄筋の使用料が少ない分、コストは抑えられますが、基礎の内側は土が露出しているため、湿気やシロアリの被害を受けやすくなります。 防湿シートやコンクリートを敷いて湿気を防ぐことも可能ですが、ベタ基礎と比べると不同沈下に弱い基礎といえます。 |
【ベタ基礎】
建物の下の地盤全体に鉄筋コンクリート製の基礎工事を行う方法です。 大きなコンクリートの板で建物全体を面で支えるため安定性を保ちます。 建物の荷重を均一に地盤に伝えることができるため、地震と不同沈下に強く、阪神淡路大震災後に普及し始めました。 現在は多くの住宅でベタ基礎が採用されています。 |
4. 基礎は高いほうが良い?
日本は雨量や湿気が多い国です。
梅雨時の湿度の高さや、昨今ではゲリラ豪雨などに耐えるために、基礎は一定以上の高さがなければいけません。
基礎の高さは建築基準法でも定められていて、地盤から30cm以上の高さを確保する必要があります。
日本では古くから高床式住居や倉庫を利用してきた歴史があり、世界的に見ても日本の基礎の高さは高い傾向にあります。
湿気や雨量が多い日本で基礎を低くしてしまうと、浸水や床下の腐食リスクが高まります。
また、低い基礎は通気性も悪く、人が入れないので点検やメンテナンスも難しくなります。
では、基礎は高ければ高いほうが良いのでしょうか。
基礎を高くすることによって、湿気や水害、ネズミや害虫対策に強くなります。
反面、出入口等に大きな高低差が生まれ、お年寄りや子供などが使いにくい家になってしまいます。
さらに、高すぎる基礎は耐震性が低下してしまう恐れがあり、使用材料も増えて工事費用が割高になります。
一般的な基礎の高さは床下の配管の保守なども考えて40~45cmを確保することが多いようです。
高さに加えて、床下の湿度性もコントロールする必要があります。
床断熱を行う場合には、風の通り道になる通気孔を適切な位置に配置し、基礎断熱を行う場合は床上の環境と併せて、湿度コントロールができる設計とします。
5. 基礎を支える地盤の強さも重要
家と基礎がいくら堅牢でも、地面が軟弱では安心して暮らすことができません。
軟弱地盤は地震に弱く、地盤沈下によって建物全体が沈む危険性があります。
地盤が弱いと想定される場合には、基礎工事の前に「地盤補強」が必要です。
「地盤補強」とは、土地の耐力を補強して、家を建てても問題ない地盤をつくることです。
家を建てる前に地盤調査を行いますが、現在主流になっている地盤調査は「スウェーデン式サウンディング調査」と呼ばれる方法です。
調査の結果、地盤の強度が不十分である場合は「地盤補強」が行われます。
地盤補強の方法は、「表層改良」「柱状改良」「鋼管杭」「砕石パイル」等、いくつかの工法があります。
【表層改良】
地盤の軟弱な部分が地表から浅い場合に使用される方法です。 セメント系固化材を土に混ぜて地盤の状態を安定させます。
【柱状改良】 円柱状に地盤を固めた改良杭によって建物を支える方法です。 軟弱地盤の深さが地中2~8mの場合に用いられます。
【鋼管杭】 地中深くにある硬い地盤に鋼製の杭を打ち込み、より強固に建物を安定させます。 重量建物も支えることができますが、工事の騒音や振動が大きく、施工コストが高いというデメリットがあります。
【砕石パイル】 地盤に孔(あな)を掘り、そこに砕石された天然石を詰め込んで石柱(パイル)を形成して地盤を補強する方法です。 杭工法と異なり、地震による地層のせん断力にも折れることなく、追随する形でせん段力を吸収する効果があります。固化材を一切使わず、天然素材のみを使用しているため、人にも環境にも優しい地盤補強です。 |
6. まとめ
「基礎」は普段じっくりと観察をしたり、あれこれと思いを巡らせる部分ではないかも知れません。
しかし大切な家を支えるために重要な部分であり、施工によって大きく家の品質に影響を与える部分でもあります。
仕上がりは同じでも、コンクリートの品質や鉄筋の配置によって基礎の強さや耐久性は大きく変化します。
家が完成したあとに交換や修理が難しい場所だけに、家づくりの計画の段階から確認してくださいね。