基本の「キ」
家づくりに建築模型は必要?
建物を計画する場合、図面よりも立体的なイメージが掴みやすいため、建築模型は古くから利用されてきました。
IT技術の向上により、3Dモデルの作成が容易になった近年でもなお、建築模型を作るメリットは多く、重宝されています。
特に図面に慣れていない人からすると、建築模型は図面よりも理解がしやすく、設計者と施主のコミュニケーションが取りやすいツールです。
建築模型を作るメリットや、どのような種類の模型があるのかについて解説させて頂きます。
家づくりの参考にして下さい。
1.図面よりも模型のほうが理解しやすい
小学校の図画工作や、夏休みの宿題で模型作りを経験された人もいるかも知れません。
ほとんどの模型は、実物の建物や立体物を縮小して作られます。
写真やカタログと比べると3次元で見ることができる模型は容易にイメージを掴めるメリットを持っています。
平面的な情報だけで立体を想像するよりも、実際の3次元立体の方が瞬時に判断することができます。
家づくりをはじめとした建築物の設計には、主に図面や仕様書といった紙ベースの設計図書が作成されます。
しかし図面は平面的な2次元情報であり、図面に慣れていない人が見てもすぐに判断ができません。
イメージと実物の乖離を生まないためにも、図面よりもわかりやすい模型を使った打ち合わせが非常に有効的です。
2.古くから利用されてきた建築模型
図面を作成する設計士は建築の知識や経験が豊富なため、図面を見るだけで立体感がすぐにわかります。
しかし、図面を見慣れていない人には簡単に理解しにくい分野でもあります。
しっかりと完成イメージを伝えたつもりでも、設計者に意図が伝わらない場合もあり、また逆に、設計者側もお施主様に伝えたつもりでも、内容が伝わらないケースもあります。
双方の認識違いや情報格差を埋め合わせるためには、図面よりもより理解がしやすい建築模型を利用することが効果的です。
さらに、設計者側も空間認識を誤認している場合があり、模型を作成して立体的に確認することにより問題点を発見しやすくなるというメリットがあります。
設計者側にもお施主様側にもメリットが多いため、建築模型は古くから双方のコミュニケーションツールとして利用されてきました。
建築模型の歴史は古く、日本では1000年以上も昔から建設に伴う現場には建築模型が作られてきました。
絵や図面で見るよりも立体的な判断が容易で、ミスや不具合を発見しやすいためです。
有名な法隆寺や清水寺なども建設前に模型が製作されています。
3.どんな種類の建築模型があるのか?
建築模型には簡易なものから精密で大型のものまで色々あります。
また、一つの建築物に対して複数の模型が作られる場合もあります。
建築模型を作る意味は、設計者側とお施主様側の認識の格差をなくすことです。
必要性に応じて、最初のプレゼンテーション用の簡易なものから、骨組みだけの模型、完成模型といったさまざまな模型が作成されます。
建築模型を目的別に分類すると以下のようになります。
【プレゼンテーション模型】 完成イメージを掴んで頂くことが目的の模型です。 【外装模型】 建物の外装や屋根の形を確認できるようにした模型のことです。 【間取り模型】 平面模型よりもさらに詳細に、家具や窓も配置された内観を確認するために作られる模型です。 通常1/100~1/20の縮尺で作成され、建物の構造説明用として使われます。 【外構模型】 建物の外構部分、生垣や庭、車庫、門扉などを表現した模型です。 |
大型の建築物になると、「インテリア模型」「ボリューム模型」「コンセプト模型」などの特殊な模型も作成されます。
4.建築模型をつくるメリット
建築模型を作る最大のメリットは、正しいスケール感で建物や内部を確認できることです。
立体的に建物を認識するだけであれば3D画像を利用することが可能です。
昨今のコンピューターは処理能力が著しく向上し、図面から立体的な3D画像が容易に作成できるようになりました。
模型よりも短時間で作成が可能で、修正や変更への対応も早くなります。
平面図に歩く位置を指定しておけば、まるで部屋の中を歩いているように画像が流れていくシステムもあります。
臨場感があり、3D画像だけで十分だという意見もありますが、やはり正しいスケール感で空間を把握するには、建築模型が適しています。
誤認識を防ぐ効果があり、「思っていたより狭かった」「想像より遠かった」「ここにこの配置はおかしい」というスケール感を伴った適切な判断をするには、3D画像より建築模型に軍配が上がります。
5.内部も配置した建築模型で確認しよう
建築模型を作成する場合、外観や敷地と建物の関係を見る模型だけでなく、内部の間取りや家具の配置も確認できる模型を利用しましょう。
建築模型は実際の建築物を計画・建設する場合の、説明・検討・打ち合わせなどの意思疎通の目的で利用されるツールです。
外観の確認も大切ですが、家づくりのための建築模型であれば、何よりも内部の間取りや動線の確認が重要です。
実際に家具を配置した場合のイメージや間取りの確認は3D映像以上に一目瞭然です。
立体的に問題が生じる部分も発見しやすくなるため、積極的に建築模型を利用した打ち合わせを行いましょう。
建築模型は「スチレンボード」と呼ばれる発泡スチロールと同類の材質で作るのが一般的です。
縮尺は「1/50」「1/100」が一般的ですが、状況により別のサイズも制作可能です。
現物に近づくほどイメージはしやすくなる反面、制作や持ち運びが難しくなります。
図面などで確認が難しい部分の打ち合わせは、建築模型を利用して双方のイメージをしっかり合致させるようにしましょう。
6.まとめ
IT技術の向上により、存在感が薄れつつある建築模型ですが、空間をより適切に把握するためには、とても優れたツールです。
内部だけでなく日当たりの確認や周囲の建物との関係性を確認する場合にも重宝します。
図面では気づかない部分も、立体的な模型なら要望や疑問などをスムーズに伝えることができます。
住まい手とつくり手、双方の良好なコミュニケーションを図るツールとして、建築模型を積極的に利用することをおすすめします。