窓は「断熱」か「遮熱」か
こんにちは、扇建築工房の井口慎弥です。
窓ガラスは今家を建てるのであれば「ペアガラス」が良く使われています。
「ペアガラス」とは
ガラスが2重になっていて
ガラスとガラスは1〜2センチ隙間があいており
隙間には空気やガスが封入されているガラスのことです。
これには技術的工夫で性能を付け加えることができ
そうしたもののひとつに
「LowE(ローイー)ペアガラス」と言われるガラスがあります。
これは2枚のガラスの間の、隙間に向かい合った面の
どちらか一方の面に金属の膜をコートしたものです。
銀を主体としたこの金属膜は
主として、熱を伝える赤外線は反射し
ほかの光は通すという性質をもたせてあり
つまり
熱は通しにくいけど、見た目は透明。
で、
屋外側か、室内側の、どっちかにコートされているこの金属膜が
どっち側のガラスについているかで役割が違ってきます。
金属膜が付いている側からやってくる熱を多く反射するため
●屋外側に金属膜があれば、屋外から室内へやってくる熱を減らす。(以下、「遮熱型」)
●室内側に金属膜があれば、室内から屋外へ出て行こうとするのを減らす。(以下、「断熱型」)
夏は「遮熱型」、冬は「断熱型」と切り替えられたら良いのですが
窓の表裏をひっくり返すことはできませんからどちらかを選ぶことになります。
基本は
省エネの点からは、冬の暖房の方がエネルギーを多く必要とするので
軽減できるように
基本の考え方を「断熱型」とします。
夏の対策をどうするか
その上で、夏の対策をどうするかということで
夏の日差しはどうなっているか思い起こしてみます。
東西
(イラスト出典:YKKapHP https://www.ykkap.co.jp/feature/025/)
東からくる 朝の日差し と
西からくる 夕方の日差し は
低い角度で横から差して来ますね。
横から差してくると、屋根がどれだけ長くて出ていても
関係なく家の中に日差しが入ってきます。
ここはガラスの力を借りて「遮熱型」にすることにします。
南
(イラスト出典:YKKapHP https://www.ykkap.co.jp/feature/025/)
南からの 昼間の日差し は
夏はほぼ真上から差して来ます。
しっかりと屋根が出ていれば窓から日差しは入ってきません。
基本の「断熱型」のままとします。
北
北は日が差さないと思われがちですが
夏の日の出は、真東より北へ少しいったところから日が上り、
日の入りは真西より少し北へいったところへ日が沈むので
実は北の窓からも低く日差しが入ってくる、ということになります。
低く差してくるので屋根で遮ることができません。
しかし1日のうちの短時間のことなので影響が小さいものとして
基本の「断熱型」のままとします。
まとめ
ということでローイーペアガラスを採用するのであれば
基本として
東と西の窓:どうやっても強い日差しが入って来てしまう→「遮熱型」
南の窓 :屋根の工夫で日差しを遮ることができる→基本の「断熱型」
北の窓 :日差しの影響が小さい→基本の「断熱型」
あとは
屋根の長さ以外に周りの状況等で日差しが遮られることが
今後も確実に見込まれるような場合は方位に関わらず適宜検討するとか
また、地域や設計者の考え方によっても異なってくるでしょう。
いずれにしてもこんなことを考えて窓ガラスを配置しているのだな、なるほどと、
自分の家がなんでそうなっているか知ると、もっと自分の家に愛着がわく
ということで、窓ガラスの基本でした。
井口慎弥
扇建築工房
iguchi@ougi.jp