基本の「キ」
自然素材の外壁材はメンテナンスが大変?
近年、外壁材といえば、窯業系サイディングや金属系サイディングなどの工業製品系が主流ですが、
自然素材の外壁材に対する関心も増えています。その理由は、独特の美しさや環境への優しさにあります。
しかし、多くの人がそのメンテナンスの手間や耐久性について疑問を持っています。
この記事では、自然素材の外壁材の種類、特徴、そして必要なメンテナンスについて詳しく説明します。
1.自然素材の外壁材にはどんなものがあるか?
自然素材を使用した外壁材は、その環境への優しさと美しさで注目されています。
ここでは特に「木」と「漆喰」に焦点を当て、それぞれの特性と利点について解説します。
他にも「石」や「タイル」など、多様な自然素材が外壁材として利用されていますが、今回は主に日本の建築において使用される素材に注目します。
1-1.板張りの外壁
板張りの外壁は、自然な見た目から温かみがあり、周囲の景観に馴染みやすいです。
日本の風土に適した材料として、古来から利用されてきました。板張りの魅力は、時間と共に育つ味わい深さにあり、経年美化を楽しむことができる点が大きな特徴です。
a.焼杉
焼杉は、素材の表面を焼くことで自然の風合いを保ちつつ、耐久性を大幅に向上させる加工技術です。
読んで字のごとく、杉の板を焼きますが、板全体を焼いているわけではなく、表面だけを焼いて炭化させています。これにより、通常の木材に比べて初期の着火性が低く(防火性が高く)なります。
また、炭自体は腐ることがないため、風雨による木材の腐朽を防ぐ性質もあります。外部からの湿気や虫害からも保護します。
焼杉の美しさはその深みのある色調と質感にあり、日本の伝統的な建築だけでなく、モダンな建築にもよく使用されています。
焼杉の生産方法には「手焼き」と「機械焼き」があり、手焼きの方が炭化層が厚く硬くなるため、機械焼きに比べて炭が落ちにくいという違いがあります。
b.杉板
杉板は、柔らかく加工しやすい特性を持ちながら、適度な硬さと耐久性を兼ね備えています。
焼杉の外壁が重厚感があるのに対し、こちらは木本来の温かみが感じられ、使うほどに味わいを増しながらシルバーグレーの色味へと変化します。
1-2.漆喰の外壁
漆喰は、その優れた耐火性で知られ、古くから日本の母屋に利用されてきました。
主に石灰や麻などの自然素材から作られます。
漆喰は空気中の二酸化炭素を吸収し硬化する性質があり、「100年かけて岩になる」と言われるほど。
時間が経つにつれてその耐久性が向上します。
自然な白色が特徴で、シンプルながらも上品な外観を実現し、現代の住宅にも多く用いられています。
2.メンテナンスの頻度は?
自然素材の外壁材のメンテナンス頻度は、建築設計や使用される環境によって大きく変わります。
外的要因に配慮した設計が行われている場合、メンテナンスの必要性は大幅に減少します。例えば、屋根の庇が広く設計されていると、日射や雨水がかかることが少なくなり、外壁材の劣化を抑えることができます。
一般的に、自然素材の外壁は長期間にわたりその美観を保つことが期待されますが、これには適切な建築設計が不可欠です。建物の向きや位置、気候条件を考慮した設計は、素材が持つポテンシャルを最大限に引き出し、寿命を延ばす効果があります。
短期的なメンテナンスを必要としないのが共通する点で、初期費用はかかるものの、ランニングコストは抑えられるという大きな利点があります。これは、定期的な修理や交換が必要な工業製品系の外壁材とは異なり、自然素材は時間が経てば経つほどその風合いを増すため、耐久性と美観を長く保つことができます。
また、製品が廃盤になる心配がないため、同じ素材での補修や追加が容易であるというメリットもあります。これにより、将来に対する柔軟性が保たれ、長期的な建物のメンテナンス計画を立てやすくなります。
3.まとめ
外壁材の選択は建物の印象に大きく左右し、素材によっては、メンテナンスの必要性が大きく変わることもあります。特に自然素材は、時間と共にその美しさが増すという特性を持っており、適切に保護された環境で使用された場合、非常に低い頻度のメンテナンスで長持ちさせることが期待できます。
設計段階で外壁への負担を減らす工夫を行うことが、長期的な美観と機能の維持には不可欠です。
自然素材の外壁材は、単に物理的な保護機能を提供するだけでなく、住む人に心地よい空間を提供し、建物に暖かみを加える役割も果たします。美的な満足感のみならず、環境への配慮という意味でも、より良い選択と言えるでしょう。
必要なのは、変化を大らかに愉しむ気持ちです。
時間を経て熟成し、その特性を最大限に発揮することができるでしょう。